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ごあいさつ

阿修羅

こんばんは。
豊田シティ法律事務所の弁護士米田聖志です。

昨年は、5月にアメリカ合衆国のオバマ大統領が原爆が落とされた広島を訪問し、被爆者に献花しました。
そして、年末の12月には、安倍首相が真珠湾・アリゾナ記念館、第二次大戦以降の米国人戦死者らが眠る米国立太平洋記念墓地を訪れ、献花しました。

これらの出来事は、敵国として対峙(たいじ)した日米の和解を印象づけました。
このニュースをみて思ったことですが、これこそが人間が今後相互に尊重しながら生きていく姿だなと思いましたね。

というのも、「正義」というのはひとつではないのです。
先の例も、アメリカからしたら原爆は戦争を早く終わらせるため、犠牲を少なくするために仕方がなかった。リメンバーパールハーバーであり、我こそが正義である、というスタンスです。

他方、日本からしても、真珠湾攻撃の宣戦布告に関しては言い分はあるところですが、何の罪もない一般市民を標的にし多くの人が犠牲になった原子爆弾投下は決して正義とはいえない。軍事施設を標的にした日本と一般市民を標的にしたアメリカ。日本の方が正義である、という見方をする人もいます。

これをみても正義はひとつではありません。
また、パレスチナ問題でも、イスラエルはテロにあった報復の空爆であり正義であると言ったり、パレスチナは空爆で罪もない人が殺された、その報復のテロであり正義であるなど、どちらにも正義と主張する根拠はあるのです。
正義がひとつしかない、という前提でいる限り、報復は連鎖するでしょう。

それを防ぐためには、どちらが正しいか、という志向ではなく、今後ウィンウィンの関係に立つための未来志向を持つことだと思っています。

弁護士は、社会正義を実現することを使命とすると法律に書いてあるのですが、依頼者の方は自分に正義があると思って事務所に来られますから、当然弁護士にも同等の思考を期待します。

しかし、前述のとおり、正義はひとつではありません。法律に書いてある社会的正義とは、世の中にはいろいろな人がいて、それぞれに事情があり、理由があるということ、そういう前提を受け入れたなかで依頼者の主張を代弁していくことだと考えています(したがって、紛争の原因を丹念に追っていく必要があります)。
たとえば、一流とされる会社であっても、いろんな人がいて、交渉が苦手であったり、口下手な人がいたりするものです。それを一流の会社であるのに、あんな不誠実な対応をされた、と怒る方もいらっしゃいます。

正義=自分の言っていることがすべて正しい、というように考えると紛争は終わらないと思っています。
正義はひとつではないということ、他人への思いやりを持つこと、これを忘れてはならないでしょう。広島とハワイへの両首脳の訪問は、このことを再認識させてくれました。

少し脱線しますが、仏教で阿修羅という魔類がいますが、本来は正義の神であったのですが、自分だけが正義だと思って、他人に対する思いやりがないために、神界から追放された魔物になった存在です。
正しいことをいうとき、私たちはその阿修羅になっている可能性があります。ひょっとしたら違う見方もあるかも、正義はひとつではないし・・・と立ち止まることが大事かなと思っています。

訴訟でもこう考えることで相手方の反論も予想できますし、当方の主張も説得力がでてくるのだと思っています。未来志向ができるようになれば、和解での早期解決もみえてきます。自分だけが正義だ、相手をこてんぱんにこらしめてくれという方もいますが、やはりこういう思考の方だと(こちらに有利な和解内容でも)和解の機会を逃しますし、判決まで行くケースが多いですね(判決で完全に勝訴すればいいのですが、結果的に和解しておけばよかったというケースもままあります)。

完全にどちらかが悪いというケースは、訴訟までいかずに解決しているケースが多く、訴訟までいくケースなどはそれぞれに事情があるケースも多いです。
したがって、弁護士は相手の立場だったらどう主張するかといった複眼的思考が必須だと思いますし、その複眼的思考で依頼者をフォローしていく必要があると思っています。

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