調停のいいところ
こんにちは。
豊田シティ法律事務所の弁護士米田聖志です。
今日は、前回に続き、民事調停について書きますね。
前回も書きましたが、最近は民事裁判修習の一環として、民事調停研修があるようです(自分らの時代にはなかったですね)。
これは、民事調停について、弁護士も理解が乏しく、うまく使いこなせていないという思いから、研修段階で見学等をカリキュラムにいれたということだと思います。
【民事調停の特徴】
1 事件類型に制限がない。
家事事件を原則とする家庭裁判所など類型が限定される場合もありますが、民事調停は基本的に何でもうけつけます。
2 手続が簡単
申立てをするのに特別の法律知識は必要ありません。申立用紙と、その記入方法を説明したものが簡易裁判所の窓口に備え付けてあるので、簡単に申立てができます(書記官にも聞けます)。
終了までの手続も調停委員会が関与し、比較的に簡単な手続といえ、自分一人で可能です。
調停委員会は、裁判官(私が勤めている非常勤裁判官含む)と調停委員(調停委員は、一般調停委員と専門家調停委員が概ね半々の感覚で、名古屋簡裁では弁護士も多数います)2名以上が調停委員会を構成して行いますので、議論が外れた方向にいくことは少ないと思います。
3 円満な解決が期待できる
双方が納得するまで話し合うことが基本なので、実情にあった円満な解決が可能です(近隣紛争や部分社会などでは適しているといえます)。
調停による解決率は、17条決定を含めると5割を超えるとのデータがあったように思います。
特に、all or nothing では妥当な結論が得られない紛争に向いていると言われています(近隣紛争、親族関係、証拠は薄いが何らかの請求をしたいという事件等)。
4 費用が安い
裁判所に納める手数料は、訴訟に比べて安くなっています。例えば、10万円の貸金返還を求める調停の場合500円ですし、調停が不調になっても2週間以内に同内容の訴訟を提起すれば調停との差額分だけ印紙を負担すれば足ります(いきなり訴訟するのと同じ印紙代です)。
5 秘密が守られる
非公開の席で行われますので、他人に知られたくない場合も安心して事情を話すことができると言われています。民事調停官として、有名人をみたこともありますので、秘密厳守というのもメリットですね。
6 専門家調停委員もいるので、専門事件(建築等)も、安く早く解決できます。
自分が現在関与している名古屋簡易裁判所では、調停委員に医師や建築士、社会保険労務士なども在籍しているので、紛争の内容に沿ってこれらの専門家調停委員が選任され、その専門知識を如何なく発揮していただいており、解決に導いていただけることも多いです。豊田など地方では、そこまで専門家調停委員が充実していないと思いますが、地方は今後の課題ですね。
7 概ね3~4回で終了(調停は時間がかかるというイメージがあるが、実はそれほどでもない)
8 仮に調停成立に至らずとも調停で争点整理されればその後の訴訟もスムーズにいくこともあり、証拠がそろっていないケースなどでも有用なことがあります。
さて、民事調停について理解していただけたでしょうか。
まだ、地方には課題も多いとは思いますが、有用なケースは多いと思いますので、機会があればひとつの手段として利用されることをおススメします。
- 2020-03-18