トップページ > ブログ > スルガ銀行のシェアハウス融資は・・・

ごあいさつ

2018 7月一覧

スルガ銀行のシェアハウス融資は・・・

こんにちは。
豊田シティ法律事務所の弁護士米田聖志です。

「かぼちゃの馬車」のビジネスモデルは、不動産のオーナーになろうとする投資家が1億円超の物件を購入できないと成り立たないので、銀行が融資してくれるかどうかが重要でした。

この融資をスルガ銀行が全面に行っていたのです。
スルガ銀行は他行で融資を断られたような人にも積極的に融資し、審査を非常に早くして、高金利(今回、被害に会ったオーナーの多くは 3.5%~4.5%の金利で融資を受けていたと言われています) だったという特徴がありました。

個人から1億円の借り入れを頼まれた場合、銀行は通常、支店ではなく、本店決済で慎重に審査しますが、スルガ銀行では各支店長が決済権を持っており、本店から積極的なリーテイル(個人向け)融資を拡大するよう一任されていました。

S社と同様のビジネスモデルで経営していた不動産会社としては、他にもサクトインベストメントパートナーズ (以下、サクトと呼ぶ)、ゴールデンゲイン〔ともに昨年末から今年5月にかけて倒産しています〕といった会社もあり、どの会社も投資家に対してスルガ銀行による融資を勧めていました。

しかし、サクトの経営破綻を機に、スルガ銀行はシェアハウスへの融資を規制するようになりました。
そのため、S社は、建築しまくった物件を投資家に売ることができなくなり、建築会社からのキックバックでサブリース賃料を賄っていたビジネスサイクルが成り立たなくなったわけです。
その結果、従来のサブリース賃料を停止することになったのです。

スルガ銀行がシェアハウスに融資した金額は、サクト、ゴールデンゲインなどで各約500億円、S社には約1200億円と報道されています。
スルガ銀行はすぐに経営に影響はないようですが、株価は急落中。5月18日の終値は前日比19%安となり、年初の高値を付けた1月10日からの下落率は5割を超えています。
ところでS社の「かぼちゃの馬車」を巡る融資審査の際には、投資家の預金通帳のコピーが改竄されて口座残高が数倍に水増しされており、これに銀行役員が関与した疑いが指摘されています。

問題の広がりを受けた金融庁は、スルガ銀行に対し、3月に『銀行法』に基づく「報告徴求命令」を出し、4月には不正を見抜けなかった同行の審査体制の実態や、神奈川県内の特定の支店に融資が集中している等の点について調べるため、急遽「立入検査」に入りました。

また、S社が経営破綻した問題で、5月8日、「オーナー(物件所有者)を支援する弁護団」が結成され、東京都内でスルガ銀行との交渉に臨みました。
オーナーの債務減免についての議論は平行線をたどったと報道されていますが、偽造書類(投資家の年収や預金口座残高を改竄したもの)に基づいて融資が実行されたとして、弁護団は5月14日にもスルガ銀行を<刑事告発>に踏み切る方針を明らかにしました。

このようなシェアハウス投資についての採算というのは、そもそもどのレベルだったのでしょうか。この点については、また次の機会に。

シェアハウス「かぼちゃの馬車」

こんにちは。
豊田シティ法律事務所の弁護士米田聖志です。

サブリース契約について、前回に続き、少し掘り下げます。

★スマートデイズ社(以下、S社といいます)のビジネスモデル

S社がシェアハウス「かぼちゃの馬車」のオーナーに払う「サブリース保証賃料」は、当初、実際に入居者が支払う「賃料」よりも高額だった場合がある、と言われています。どうしてそのようなことができたのでしょうか?

-1.「表向き」のビジネスモデル:
オーナー側への説明は、以下のような仕組みでした。《仮に入居者から「家賃」を一切貰わなくても、職業斡旋による斡旋先企業からの「紹介手数料」や、提携企業のサービスを利用した際のマージンなどの「家賃外収入」で「サブリース家賃」を保証する》というビジネスモデルです。
実際、S社は2015年に《有料職業紹介事業》の許可を取っています。表向きは「職業斡旋」が主な収益源なので、入居者の滞在率が低い方が都合よいとしていました。〔職が決まって退去し、新たに入居した人に職を斡旋するというサイクルが成り立つため、とのこと。S社の社長が出版した『家賃0円・空室有りでも儲かる不動産投資』にそのような説明が掲っています〕。

前記で説明したように「かぼちゃの馬車」の専有部屋の面積は非常に狭く、女性専用で邸宅風のおしゃれな外観にすることによって恰好をつけているだけでした。実態は、狭い部屋に押し込めて、職業斡旋するという<タコ部屋と同じ仕組み>のようです。

シェアハウスは、(ア)《1. 敷金・礼金・仲介手数料などの初期費用がかからず、2.審査が緩いので入居しやすい、3.家具や家電の購入の必要がないため入退去しやすい》という特性を生かしたものですが、S社の場合は、それに加えて(イ)仕事を探しに上京してくる女性を入居させて「職業斡旋」することをビジネスモデルにするものです。
<職がないと審査が通らず部屋が借りられない、住む部屋がないと仕事が決まらない>というジレンマを抱える女性をターゲットにした《新たな貧困ビジネス》と一部の専門家からは揶揄されていましたが、会社側は「入居者プラットフォームビジネス」として表向きのスキームを説明していました。

しかし、実際には、近年のシェアハウスはa.立地が悪く、b.家賃も相対的に高かったため、c.空室率が高く (今年1月の空室率は一時66%)、d.入居者への職業斡旋ビジネスも月に数百万円程度しか利益が出ていなかったとされています。紹介手数料は、正社員の場合、年収の20%~30%が相場なので、一人年収300万円でも60万~90万円の報酬が入るはずですが、わずかな利益しか出なかったということはいかに職業斡旋ビジネスがうまくいかなかったかが窺えます(実際、東京でも極端な人手不足で、職業斡旋ビジネスは難しい局面にあると言われています)。

-2. S社の《実際の「裏」のビジネスモデル》
不動産専門家が分析するところでは、S社の現実の経営資金は職業斡旋などのマージンではなく、系列会社である建築会社からのキックバックを原資にしたもので、具体的にはこうです。

まず「利回り8%、30年間家賃保証」という謳い文句で営業し、(ア)土地の購入と(イ)シェアハウス建設のため、スルガ銀行へ億円単位の融資をオーナーにしてもらいます。シェアハウスはS社の下請け会社が建築し、相場より高い値段で建物と土地をオーナーに購入させます (オーナーになろうとする人が投資家としての見識を有していなければ、不動産事業を生業とする会社にやすやすと騙される可能性があります)。
この際、S社は下請けの建築会社からコンサル料という名目で50%のキックバック(紹介料)を受け取っていたと言います。

そしてS社は、建設されたシェアハウスをオーナーから一括で借り上げ、a.入居者の募集やb.シェアハウスの賃貸管理を代行し、①入居者の賃料と②建築会社からのキックバックを原資にオーナーに家賃を保証する、というのが《実際のスキーム》でした。
土地と建物をセットで販売していたため、オーナーの投資額は1億円を超えるケース〔例:1棟分の投資額は土地の購入価格が6000万円程度、シェアハウスの建築費が5000万円程度〕が多いといわれていますが、土地の購入価格も相場より割高で、建物のキックバックは建築費の半分、土地と建物を合わせて1棟4千万円程度を受け取っていたのではないか、とみられています。

1棟を建築するだけで4千万円の「キックバック」が発生するため、次々と都内に「かぼちゃの馬車」を建てまくり、それらで得た収益を「賃料」の原資とする“自転車操業”のビジネスモデルだったわけです。会社設立の翌2013年の売上高が4億円、わずか4年後の2017年に 317億円と急成長した理由がわかろうというものです。今年1月の空室率が一時66%もあり、家賃収入はその分減るため、資金繰りが行き詰まり、破産したのも当然ですよね。

このS社もかのスルガ銀行のシェアハウスへの融資規制で倒産の危機に陥ります。ニュースを賑わせたスルガ銀行ですが、長くなってきたのでまた次回に書きます。

不動産投資のサブリース契約にはご注意を

こんにちは。
豊田シティ法律事務所の弁護士米田聖志です。

今、さまざまな要因から、アパート建設やワンルームマンション、シェアハウスなどの《収益不動産投資》が熱を帯びています。
この背景には、マクロ経済要因として日本銀行による異次元緩和と超低金利政策があります。行き場を失ったマネーが株式と不動産市場に流れ込み、株式相場や不動産価格を押し上げ、キャピタルゲイン狙いの投資が増加したとされています。

一方で、銀行などの金融機関は、企業の海外進出や人口減少などによる市場の縮小からくる貸出機会の減少から、担保を取りやすい不動産への融資姿勢を強めているようです。
不動産投資への誘因という観点からみて極め付きは、2015年1月施行の「相続税の増税」<*1>です〔それまでの基礎控除額を4割減に縮小したため、2015年相続税の課税対象者は前年の1.8倍に増大〕。
その結果、土地を相続した人が相続税の節税効果の高いアパート建設に乗り出し、ブームとなったのです。他にも将来の年金不安や給料がなかなか増えない中で、副業感覚でワンルームマンションなどの<不動産投資>に走るサラリーマンも増えています。これらが不動産投資が活況を呈している背景です。

そのような中で、今年5月、女性専用のシェアハウス「かぼちゃの馬車」を経営する不動産会社の㈱スマートデイズが破産し、多数の不動産投資家(オーナー)に融資していたスルガ銀行の不正ともいえる乱脈融資と抱き合わせで大きな問題になっています。

ここでは、(1)「相続税の節税対策」を活用しようとして、土地保有者が大東建託や大和ハウス工業などと「サブリース契約」を結んでアパート経営に乗り出すケース、(2)サラリーマンなどが投資目的で不動産投資に乗り出すケース〔「かぼちゃの馬車」への投資などはこれに該当します〕の2つのケースに分けて説明します。

(1)でも(2)でも、不動産会社が地権者や投資家に提示する「事業計画(収支シミュレーション)」では多額の儲けが出る事業計画になっていますが、本当にその通りにうまくいくのでしょうか? 必ずしも、そうでないのが不動産投資なのです。

たとえば1990年に始まる日本経済のバブル破裂を見ても、株式市場の崩壊の後には長期にわたる“地獄”のような不動産市場の暴落が続きました。
これが、「失われた20年」と呼ばれる「不動産バブルの後始末」、つまり「不良債権処理」です。まして今は、2013年4月から始まった日銀による金融の異次元緩和で、カネが実物市場に回り切れないほどジャブジャブの状態なのです。
有り余ったカネは株式市場と不動産市場に流れ込む以外にありません。後から、「あの時はバブルだったなぁ~」と振り返ることになるかもしれませんよ。大金が絡むゆえに、不動産投資には“甘い罠”が潜んでおり、注意が必要です(続く)

梅雨明け

こんにちは。
豊田シティ法律事務所の弁護士米田聖志です。

広島や岡山、愛媛などを襲った記録的豪雨があり、多くの犠牲者が出たことについてはとても辛いですね。
土砂崩れなどを見ていると自然の力は、やはりすごいですし、最近の日本は昔より異常気象と言われる天気が多い気がします。

今日は裁判所で非常勤裁判官をする日でしたが、雨がたくさん降った数日前とはうって変わり、30度を超える気温で、エアコンの気温が全館管理される裁判所では汗だらだらでした。

さて、最近オウム真理教の教祖や元幹部たちの死刑が執行されたというニュースがありました。
日本では死刑は法務大臣の職務ですので、確定した死刑囚については刑を執行していかなくてはいけないのが法治国家としてのルールです。
中には、心情的に死刑は執行できない、と述べた法務大臣がいましたが、法治国家ということであれば大臣は拒否できないのが筋です。

自分は世の中に死刑制度に反対する人がいてその考え方も一理あると思っていますが、現状では死刑制度賛成が多数といってよいでしょう。
死刑反対が国民の大多数になり法律が改正されれば死刑は執行しないで済みますので、死刑が残虐だと主張する人は、選挙で多数派になるよう運動していき、法改正などをして思いを実現していくことになります。その意味で、なおさら国政選挙は大事ですね。
(たしか日本では死刑制度に7割くらいが賛成だったような気がしますので、なかなか多数派になるのは現時点で難しいでしょうが、いつか日本でも死刑制度がなくなるように思います)

今回のオウム裁判で、元医師の人だけ無期懲役になっています。
犯情からすればあれだけ大きな結果が生じている以上、いくら全容解明につながったからといっても、死刑になるのが実務家としての感覚です。無期懲役は、検察の温情としか思えません。

検察は、無期懲役を求刑しましたが、全容解明に役立った、反省しているとかの一般情状を考慮しすぎている気がします。
弁護士からすれば、実行犯でありながら死刑でないというのは、実務の考え方からいってもおかしいかなと思っています。やはり他の人との刑の均衡というのは考慮すべきでしたし、何より犯情を第一に検討していく姿勢が見たかったですね(近時の裁判員裁判も犯情を第一に考えて、刑罰の幅をまず決めるのがセオリーとなってます)。

日本代表ありがとう

こんにちは。
豊田シティ法律事務所の弁護士米田聖志です。

ワールドカップで日本代表がベスト8を目前にして大会を去ることになりました。
深夜3時という時間帯で、およそ次の日の仕事に差し支えると思い、録画して朝6時くらいから見ようかと思っていたのですが、暑さで3時15分に目が覚め、そのままテレビに釘付け状態となりました。

最後は、延長戦かと思ったのですが、ものすごいカウンターで失点してしまいました(ベルギーも疲れているので、コーナーが失敗しても延長戦になるのかなと思ってました)。
結果的には、ショートコーナーなどで時間をかけて延長戦にするか、ディフェンダーの頭数をそろえてもしものカウンターに備えるかしておけばよかったのでしょうが、個人的には結果論であって、3点目をとって決着をつけるという意思が日本代表にあった以上、カウンターリスクは当然であって、仕方ないのかなと思います(点が入っている可能性もあったので)。

「たら」「れば」を言えばキリがないですが、リターンを求めればリスクを伴うので、勝負事は難しいですね。
ただ、この試合デルピエロとかポドルスキとかオシムとかザッケローニとかいろんな方が「素晴らしい試合」と言ってくれたようで、日本の最後まで攻める姿勢は見ている人に何かを感じさせたのではないかと思います。
もちろん、自分も感動しました。

次は、ベスト8に行ってほしいですね。

  • calendar

    2018年7月
    « 6月   8月 »
     1
    2345678
    9101112131415
    16171819202122
    23242526272829
    3031  
  • categories

  • selected entries

  • archives

  • profile

    豊田シティ法律事務所
  • メタ情報

  • mobile

    QRコード
  • お問い合わせ

    ご相談のご予約受付時間  9:00~17:00

    メールでのご予約
    0565-42-4490