スルガ銀行のシェアハウス融資は・・・
こんにちは。
豊田シティ法律事務所の弁護士米田聖志です。
「かぼちゃの馬車」のビジネスモデルは、不動産のオーナーになろうとする投資家が1億円超の物件を購入できないと成り立たないので、銀行が融資してくれるかどうかが重要でした。
この融資をスルガ銀行が全面に行っていたのです。
スルガ銀行は他行で融資を断られたような人にも積極的に融資し、審査を非常に早くして、高金利(今回、被害に会ったオーナーの多くは 3.5%~4.5%の金利で融資を受けていたと言われています) だったという特徴がありました。
個人から1億円の借り入れを頼まれた場合、銀行は通常、支店ではなく、本店決済で慎重に審査しますが、スルガ銀行では各支店長が決済権を持っており、本店から積極的なリーテイル(個人向け)融資を拡大するよう一任されていました。
S社と同様のビジネスモデルで経営していた不動産会社としては、他にもサクトインベストメントパートナーズ (以下、サクトと呼ぶ)、ゴールデンゲイン〔ともに昨年末から今年5月にかけて倒産しています〕といった会社もあり、どの会社も投資家に対してスルガ銀行による融資を勧めていました。
しかし、サクトの経営破綻を機に、スルガ銀行はシェアハウスへの融資を規制するようになりました。
そのため、S社は、建築しまくった物件を投資家に売ることができなくなり、建築会社からのキックバックでサブリース賃料を賄っていたビジネスサイクルが成り立たなくなったわけです。
その結果、従来のサブリース賃料を停止することになったのです。
スルガ銀行がシェアハウスに融資した金額は、サクト、ゴールデンゲインなどで各約500億円、S社には約1200億円と報道されています。
スルガ銀行はすぐに経営に影響はないようですが、株価は急落中。5月18日の終値は前日比19%安となり、年初の高値を付けた1月10日からの下落率は5割を超えています。
ところでS社の「かぼちゃの馬車」を巡る融資審査の際には、投資家の預金通帳のコピーが改竄されて口座残高が数倍に水増しされており、これに銀行役員が関与した疑いが指摘されています。
問題の広がりを受けた金融庁は、スルガ銀行に対し、3月に『銀行法』に基づく「報告徴求命令」を出し、4月には不正を見抜けなかった同行の審査体制の実態や、神奈川県内の特定の支店に融資が集中している等の点について調べるため、急遽「立入検査」に入りました。
また、S社が経営破綻した問題で、5月8日、「オーナー(物件所有者)を支援する弁護団」が結成され、東京都内でスルガ銀行との交渉に臨みました。
オーナーの債務減免についての議論は平行線をたどったと報道されていますが、偽造書類(投資家の年収や預金口座残高を改竄したもの)に基づいて融資が実行されたとして、弁護団は5月14日にもスルガ銀行を<刑事告発>に踏み切る方針を明らかにしました。
このようなシェアハウス投資についての採算というのは、そもそもどのレベルだったのでしょうか。この点については、また次の機会に。
- 2018-07-31
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- by 豊田シティ法律事務所