トップページ > ブログ > シェアハウス「かぼちゃの馬車」

ごあいさつ

2018 7月 24一覧

シェアハウス「かぼちゃの馬車」

こんにちは。
豊田シティ法律事務所の弁護士米田聖志です。

サブリース契約について、前回に続き、少し掘り下げます。

★スマートデイズ社(以下、S社といいます)のビジネスモデル

S社がシェアハウス「かぼちゃの馬車」のオーナーに払う「サブリース保証賃料」は、当初、実際に入居者が支払う「賃料」よりも高額だった場合がある、と言われています。どうしてそのようなことができたのでしょうか?

-1.「表向き」のビジネスモデル:
オーナー側への説明は、以下のような仕組みでした。《仮に入居者から「家賃」を一切貰わなくても、職業斡旋による斡旋先企業からの「紹介手数料」や、提携企業のサービスを利用した際のマージンなどの「家賃外収入」で「サブリース家賃」を保証する》というビジネスモデルです。
実際、S社は2015年に《有料職業紹介事業》の許可を取っています。表向きは「職業斡旋」が主な収益源なので、入居者の滞在率が低い方が都合よいとしていました。〔職が決まって退去し、新たに入居した人に職を斡旋するというサイクルが成り立つため、とのこと。S社の社長が出版した『家賃0円・空室有りでも儲かる不動産投資』にそのような説明が掲っています〕。

前記で説明したように「かぼちゃの馬車」の専有部屋の面積は非常に狭く、女性専用で邸宅風のおしゃれな外観にすることによって恰好をつけているだけでした。実態は、狭い部屋に押し込めて、職業斡旋するという<タコ部屋と同じ仕組み>のようです。

シェアハウスは、(ア)《1. 敷金・礼金・仲介手数料などの初期費用がかからず、2.審査が緩いので入居しやすい、3.家具や家電の購入の必要がないため入退去しやすい》という特性を生かしたものですが、S社の場合は、それに加えて(イ)仕事を探しに上京してくる女性を入居させて「職業斡旋」することをビジネスモデルにするものです。
<職がないと審査が通らず部屋が借りられない、住む部屋がないと仕事が決まらない>というジレンマを抱える女性をターゲットにした《新たな貧困ビジネス》と一部の専門家からは揶揄されていましたが、会社側は「入居者プラットフォームビジネス」として表向きのスキームを説明していました。

しかし、実際には、近年のシェアハウスはa.立地が悪く、b.家賃も相対的に高かったため、c.空室率が高く (今年1月の空室率は一時66%)、d.入居者への職業斡旋ビジネスも月に数百万円程度しか利益が出ていなかったとされています。紹介手数料は、正社員の場合、年収の20%~30%が相場なので、一人年収300万円でも60万~90万円の報酬が入るはずですが、わずかな利益しか出なかったということはいかに職業斡旋ビジネスがうまくいかなかったかが窺えます(実際、東京でも極端な人手不足で、職業斡旋ビジネスは難しい局面にあると言われています)。

-2. S社の《実際の「裏」のビジネスモデル》
不動産専門家が分析するところでは、S社の現実の経営資金は職業斡旋などのマージンではなく、系列会社である建築会社からのキックバックを原資にしたもので、具体的にはこうです。

まず「利回り8%、30年間家賃保証」という謳い文句で営業し、(ア)土地の購入と(イ)シェアハウス建設のため、スルガ銀行へ億円単位の融資をオーナーにしてもらいます。シェアハウスはS社の下請け会社が建築し、相場より高い値段で建物と土地をオーナーに購入させます (オーナーになろうとする人が投資家としての見識を有していなければ、不動産事業を生業とする会社にやすやすと騙される可能性があります)。
この際、S社は下請けの建築会社からコンサル料という名目で50%のキックバック(紹介料)を受け取っていたと言います。

そしてS社は、建設されたシェアハウスをオーナーから一括で借り上げ、a.入居者の募集やb.シェアハウスの賃貸管理を代行し、①入居者の賃料と②建築会社からのキックバックを原資にオーナーに家賃を保証する、というのが《実際のスキーム》でした。
土地と建物をセットで販売していたため、オーナーの投資額は1億円を超えるケース〔例:1棟分の投資額は土地の購入価格が6000万円程度、シェアハウスの建築費が5000万円程度〕が多いといわれていますが、土地の購入価格も相場より割高で、建物のキックバックは建築費の半分、土地と建物を合わせて1棟4千万円程度を受け取っていたのではないか、とみられています。

1棟を建築するだけで4千万円の「キックバック」が発生するため、次々と都内に「かぼちゃの馬車」を建てまくり、それらで得た収益を「賃料」の原資とする“自転車操業”のビジネスモデルだったわけです。会社設立の翌2013年の売上高が4億円、わずか4年後の2017年に 317億円と急成長した理由がわかろうというものです。今年1月の空室率が一時66%もあり、家賃収入はその分減るため、資金繰りが行き詰まり、破産したのも当然ですよね。

このS社もかのスルガ銀行のシェアハウスへの融資規制で倒産の危機に陥ります。ニュースを賑わせたスルガ銀行ですが、長くなってきたのでまた次回に書きます。

  • calendar

    2018年7月
    « 6月   8月 »
     1
    2345678
    9101112131415
    16171819202122
    23242526272829
    3031  
  • categories

  • selected entries

  • archives

  • profile

    豊田シティ法律事務所
  • メタ情報

  • mobile

    QRコード
  • お問い合わせ

    ご相談のご予約受付時間  9:00~17:00

    メールでのご予約
    0565-42-4490