就業規則「周知」の 具体的方法
こんにちは。
豊田シティ法律事務所の弁護士米田聖志です。
労働基準法第89条では、「常時10人以上」の労働者を使用する使用者(会社)は、就業規則を作成し労働基準監督署に届出する義務を負う旨定められています。
昨今の労使トラブル予防の重要性を考えると、10人未満の事業所であっても就業規則を作成し、届出することが望ましいでしょうね。
労働基準法第106条には、「使用者は、就業規則を、①常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、または備え付けること、②書面を交付すること、③その他の厚生労働省令で定める方法によって、労働者に周知させなければならない」と定められています(就業規則の周知義務を果たしていない場合は労働基準監督署からの是正勧告や指導、場合によっては罰金が科されるケースもあります)。
なお2022年2月には、この「就業規則周知義務」を会社が果たしていないとして、就業規則に規定された「固定残業制度」自体を無効とし、固定残業制度を設けていたにも関わらず未払い残業代の支払いを命じた判決が出されました。
金銭的なリスク対策のためにも就業規則周知は以下の方法で正しく行いましょう。
① 常時掲示・備え付け
従業員が誰でも手に取れるような場所に就業規則を備えておくことを指します。
・ 鍵のかかっていない共有のキャビネットに冊子を保管する
・ 誰でも立ち入れる場所に掲示する
なお、備え付けた就業規則を「閲覧のみ」に限定し、社内の重要書類の紛失や悪用防止の観点から「持ち出し禁止、コピー・撮影は許可制」とすることは可能でしょう。
しかし必要以上に就業規則閲覧から労働者を遠ざけるような管理体制は会社に不利に働きかねないので、隠さずに堂々と設置した方が良いでしょう。
② 書面交付
「就業規則コピーを従業員に渡す」という周知方法も可能です(このような会社はそれほど多くないと思いますが)。
やるのであれば、書面交付の際に受け取った確認のサインをもらうなど、周知記録を残すと良いでしょう。
③その他
就業規則P D Fデータを誰でもアクセスできる社内サーバーに保管するなどの方法を指します。
このような会社は、そこそこある印象ですが、パスワードなどで閲覧制限をかけた状態では周知義務を果たしていないとみなされる可能性がありますのでご注意を。
あと重要なのは、就業規則の改定の場合ですね。不利益変更といって後で争われる可能性もありますので、サインをもらっておくと安心です。
賃金(給与・賞与)や退職金、労働時間など重要な労働条件にかかる就業規則の規定・改定の周知については、説明会を開催するほうが良いこともあります。
説明会を開く場合は参加者名簿や議事録等を作成し、周知した事実を記録しておきましょう。
- 2022-06-06