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ごあいさつ

パナマ文書②

こんにちは。
豊田シティ法律事務所の弁護士米田聖志です。

今日も事務所通信のコラムについて、前回の続きを転載します。

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前記の元旦号に、「国内の所得格差を表す《相対的貧困率》は、経済協力開発機構(OECD)に加盟する34ケ国のうち、ワースト(悪い方から)第1位がイスラエル、同2位 メキシコ、同3位 トルコ、同4位 チリ、同5位 米国、6番目に悪いのが日本で16・0%。

また、わが国の<父子 or 母子家庭の貧困率>は、加盟国で最悪の50・8%にのぼります。
河上氏が『貧乏物語』を書いてから百年の年を迎えた今も、”格差が生む貧困”がこの国に存在する」と書かれています。その通りだと思います。

ところで、日本のサラリーマンの年収は、1997年度に467万円でしたが、2103年度には 414万円まで下がっています。ピークの1997年1-3月期と比べて、2015年7-9月期の水準は▲14・5%も下がっているのです。

安倍総理が春闘前に経団連等の財界に対して盛んに賃金アップを要請していますが、そういう事情もあるのです。
日本の《格差の拡大》は、非正規雇用者の増大にもはっきり示されています。
非正規労働者の労働人口全体に占める比率は、1990年には20%だったのが、25年経った現在は37.9%まで上昇しています。男女別・年齢別に非正規比率をみますと、女性の非正規の割合が高く、2014年で57・7%と半数を超えています。

そして15~24歳の若い男性の非正規の割合は46・4%と、65歳以上の高齢者(男性72・3%、女性77・9%) に次いで多いのが特徴です。

現政権が《一億総活躍社会》で一番活躍してほしいと言っている女性と若い男性に最も非正規が多いという皮肉な現実があります。

世界のグローバル経済化が進むなかでは、中国やインド、ミャンマーといった国々の賃金の下押し圧力を受けますので、それらと競合するような産業界で働く人々の賃金は下がらざるを得ないのが現状です。 また、そのようなグローバル経済の動向に合わせようとわが国が進めている《労働規制の緩和》が、結果的に賃金を下げる方向に働いていると考えられます。

このような経済事情の結果、これまで「中産階級の国」だった日本はもはやそうではなくなり、2極分解してかなりの部分が下層化していく状況にあると考えられます。このことは、個人の金融資産のデータをみると、よくわかります。

株価が上がったことが影響して個人金融資産約1,700兆円は、現在も増え続けています。
しかし、もう一つの総務省統計をみると、2人以上の世帯で、うち勤労者世帯の金融資産の統計の中央値は、2002年の 817万円から2014年には 740万円に下がってきています。

個人の金融資産総額は、バブル崩壊直後の1990年度末で1,025兆円だったのが、2014年度末には1,700兆円にまで増えており、人口は1億2,700万人ぐらいであまり変わりませんから、一人当たりの平均資産額は増え続けています。しかし、中央値は下がってきています。中央値(100人中50番目)の人の金融資産が減ってきているということは、中産階級が没落してきていることを示しています。

このような《経済格差》の拡大はいずれの先進国でも見られます。今年3月に政府主催の「国際金融経済分析会合」に講師として招かれた米コロンビア大学教授のジョセフ・スティグリッツ教授 (2001年 ノーベル経済学賞受賞。前述の宇沢 弘文・東大名誉教授の弟子にあたるニューケインジアン学派の経済学者)は、『これから始まる“新しい世界経済”の教科書』の中で、米国での経済格差の事例として次のような例を掲げています。

▽1. 2009~12年の4年間の米国経済所得増加分の91%は、国民の1%に 当たる富裕層の手に渡った。
▽2. 2008年9月のリーマンショックとそれに続く不況で、米国では1,000万世帯が家を失ったり差し押さえられたりして、870万人が失業した。
▽3, 米国の家計所得の中央値は、2000~2013年の間に7%減少した。
▽4. 米国企業のCEOと従業員の平均年収比は、1965年の「20 対 1」から2013年には 「295 対 1」に拡大した。

最後に、アメリカ経済の格差拡大がここまで進んでいるのか、というデータがあります。

アメリカは元々先進国の中で“最も格差の大きな国”ですが、このところ格差は大きく拡大し、1976年の8・9%から2007年にはトップ1%の所得シェアが23.5%にも達しています。

これは、1928年のレベルに匹敵します。1928年といえば、米ウォール街で世界大恐慌の引き金になった“株価大暴落”(1929年10月24日)のあった前年であり、翌1930年にはわが国もその余波を受けて昭和恐慌が勃発、それが第二次世界大戦へと繋がっていく要因になったことはよく知られています。また米国では、ストック・オプション等の影響もあって、CEO(企業の経営最高責任者)上位100人の報酬と一般労働者の平均報酬の比率は、実に800倍近くにもなっています。

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