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ごあいさつ

2019 3月 24一覧

有給休暇取得の義務化

こんにちは。
豊田シティ法律事務所の弁護士米田聖志です。

有給休暇の取得義務化は、今年4月からですね。
平成19(2007)年12月に策定された、厚生労働省の『仕事と生活の調和推進のための行動指針』では、「2020年までに有給休暇取得率70%とする」との政府の数値目標が掲げられています。

ところで、世界最大級の旅行予約サイト運営会社の日本語サイト「エクスペディア・ジャパン」は毎年、世界19ヶ国の18歳以上の有職者男女を対象に『有給休暇の国際比較調査』を実施していますが、「2017調査」(計15,081名)では「2016年調査」に続き、日本の「有給休暇消化率」は<世界最下位の50%>という結果でした。

加えて、有給休暇を取得することに対して「罪悪感がある」と考える日本人の割合は「58%」(世界最多)にのぼり、「上司が有休取得に協力的」と回答した人の割合は日本は「43%」と最少、上司世代の考え方が取得率上昇を阻む一因になっているとみられ、《日本は世界一、有給休暇が取りにくい国》と報じています。

なお厚労省の調査による日本の2015年度年休取得率は「48.7%」ですから、上記のエクスペディアの調査結果とほぼ合致しています。
ちなみに、世界30ヶ国中、ブラジル、フランス、スペイン、ドイツ、香港、タイの6ケ国のは有給休暇取得率は「100%」で、ワースト1の日本(50%)は、ワースト2のオーストラリア(70%)、同3の米国(71%)と比べても格段に低かったとのことです。

このように、政府の「2020年までに有給休暇取得率70%とする」との目標も道半ばというところです。

このような背景を受け、今回の『改正労働基準法』では、(A)「使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、そのうちの5日について、毎年、時季を指定して与えなければならない」という内容が規定されました。

ただし、(B)労働者の「時季指定」や「計画的付与」により取得された年次有給休暇の日数分については指定の必要はない、とされています。

「5日」については、会社が「時季指定権」を持つことになります。

-1.使用者は労働者から希望を聞いたうえで、
-2.「では、×月×日に有給休暇を取得してください」と時季を指定します。決して、会社が一方的に時季を決められるわけではありません。「取得期間」は年次有給休暇の付与日より1年以内です。

それでは、「時季を指定して有給休暇を与えなくてもよい場合」とは、どのような場合をいうのでしょうか? それは、次のような場合です。

(ア) 1年に5日以上の有給休暇を自主的に取得している場合
(イ) 年次有給休暇の<計画的付与>で5日以上付与される場合
(ウ) 「労働者自らの取得3日+計画的付与2日」など、自主的に取得した年次有給休暇の日数と計画付与が5日に達する場合

つまり、どのような形であれ 労働者が年間で「5日」以上、年次有給休暇を取得できていれば、<時季指定>を行う必要はありません。逆に「年次有給休暇」が年間で5日に達しない場合は、足りない日数のみの時季指定を行う必要があります。

【例1】労働者が自ら2日の年休を取得した → 残り3日間は会社が<年休の時季指定>を行う。
【例2】3日の年休の「計画的付与」<*4>を実施 → 残り2日間は会社が<年休の時季指定>を行う。

<*4>「計画的付与」とは
労働者が有給休暇を取得しやすくするため、企業側があらかじめ有給休暇の取得日を割り振る制度のことです。特に積極的な有給休暇取得の風土ができていない企業の場合に有効です。年次有給休暇の日数のうち5日は個人が自由に取得できる日数として必ず残しておく必要があるため、計画的付与の対象となるのは年次有給休暇の日数のうち、5日を超えた部分となります。例えば、年次有給休暇の付与日数が10日の従業員に対しては5日、20日の従業員に対しては15日までを計画的付与の対象とすることができます。具体的には、次のような形態があります。

(A) 企業あるい事業所全体での一斉付与 →飛び石連休の平日をお休みとするなど、
(B) 班やグループ別の交代制付与 →仕事が落ち着いている時期に、部署ごとに有給休暇を設定、
(C)「年次有給休暇付与計画表」による個人別付与 →夏季休暇、年末年始などの大型連休に有給休暇を追加したり、誕生日や結婚記念日など個人的記念日に合わせたりして取得してもらう。

--いずれにしても、会社は各社員の有給年休取得状況を正確に把握しておく必要があります。
《年次有給休暇の計画的付与》を実施するためには、以下のような手続きが必要となります。

【1】就業規則による規定
《年次有給休暇の計画的付与制度》を導入する場合には、まず「就業規則」に「5日を超えて付与した年次有給休暇については、従業員の過半数を代表する者との間に協定を締結したときは、その労使協定に定める時季に計画的に取得させることとする」等のように定めることが必要です。

【2】労使協定の締結
実際に計画的付与を行う場合には、「就業規則」の定めるところにより、従業員の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者との間で、書面による協定を締結する必要があります。なお、この労使協定は所轄の労働基準監督署に届け出る必要はありません。労使協定で定める項目は次のとおりです。
○計画的付与の対象者(あるいは対象から除く者)
○対象となる年次有給休暇の日数
○計画的付与の具体的な方法
○対象となる年次有給休暇を持たない者の扱い
○計画的付与日の変更

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